十三夜にススキを生ける

今年の十三夜は10月18日であるので、我が家に伝わる十三夜用の大徳利にススキを生けたのである。

本来は神様にお酒をお供えする瓶子(へいし)という器に生けるのであるが、まあ、我がご先祖様は粋に大徳利で代用されたということかもしれないのである。

我が家に伝わるススキ用の大徳利は十五夜用と十三夜用があるが、微妙な模様の違いがあって、まあ、あたしとしてはどっちがどっちでもいいが、ご先祖様が決めたことであるので、今夜は十三夜用である。

ちなみにこれが我が家に伝わる十五夜用の大徳利である。

十三夜は陰暦9月13日の夜。8月15日夜の十五夜に次いで月が美しいとされ、「後(のち)の月」という。十五夜の月を芋(いも)名月というのに対し、豆名月・栗名月ともいう。(デジタル大辞泉)

ということであるが、華道家としてはとにもかくにもススキを生けて十三夜を寿ぐのが使命である。

十五夜の時と同様に、ススキを取りに山野を駆け巡ったのであるが、なにしろ一般的にはススキはやっかいものであるので、どこも業者の草刈りの憂き目にあってなかなか見つからず、やはり道路際の植え込みに生えてるのを愛用の生け花鋏で採取してきたのである。

その折にいわゆるひっつき虫あるいはくっつき虫がスウェットに大量にくっついて、取るのにこれもう難渋したのである。

この写真はほとんど取ってしまった後のもので、大げさでなくこの10倍ぐらいくっついていたのである。

これはヌスビトハギ(盗人萩)の実で、取るには天日干しにして乾燥させるといいらしいがそんな暇はないので指で一個一個はがしたのである。

この手の三角形の実は、ヤブハギ 、 ケヤブハギ、フジカンゾウ などがあり、 実の表面にかぎ状の毛が密生していて、強力なマジックテープのようにくっつくわけである。

勘弁してくれということであるが、べつにひっつき虫に非があるわけではなく、ススキを取るのに夢中でそんなことにはまったく気が回らなかったあたしに非があるのは言うまでもないことである。

そんなこんなで困難にもめげずススキを採取して作品としたのである。

ススキ(芒、薄)はイネ科ススキ属の植物でオバナ(尾花)ともいい秋の七草の一つである。

また茅(かや、萱)と呼ばれる有用植物の主要な一種で、野原を中心に民家の庭先や道路わきの植え込みなど、ある意味どこにでも生え、ごく一般的にあちこちで見られる多年生草本である。

ススキは秋を象徴する植物として日本文化の中で重要な植物であり、十五夜の飾り、さらに我が家のように伝統を重んじる家では十三夜の飾りとなるわけである。

一応東京都の我が家でもかつては屋根を葺く材料として重要であり、そのため所有地に萱場(かやば)と呼ばれるススキを採集するための場所があり、葺き替えの時は親戚組合講中がこぞって参加しておおごとであったのである。

そんな風習も今はなく寂しい限りであるが、せめて十五夜十三夜の飾りとして当時を偲ぶ材料といたすのである。

オチはない。

象気功

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